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【インタビュー】コピックアワード2022 準グランプリ カット・ヤングさん

 2024.06.06

COPIC AWARD Mini-interview with Kat Young

カット・ヤングさんはオーストラリアのアーティスト・イラストレーターです。児童書、小説の表紙、映画の挿絵、ビデオゲームやアート雑誌、コミックブック、ボードゲーム、公共の壁画、服飾ブランドのデザインなど、幅広い分野で活躍しています。彼女の作品は様々なメディアやテーマに及んでいますが、その根底にあるのはストーリーを伝えることであり、その作品の多くは彼女自身の経験を反映しています。

また、カットさんはオーストラリアにおける「生涯コピック・アンバサダー」で、ここ数年に渡りコピックアワードにご応募くださっており、素晴らしい結果を残しています。まず2021年に「Connection」がエリア賞(APAC)を受賞、そして2022年には「From Within (anaglyph art)」が準グランプリに選ばれています。昨年2023年には「Sanctuary」が一次審査を突破し、入選作品として最終選考に残りました。

個人サイト: https://katartillustrations.com
インスタグラム: https://www.instagram.com/katartillustrations
X (旧Twitter) twitter.com/KAIllustrations
Facebook https://www.facebook.com/KatArtIllustrations
YouTube https://www.youtube.com/c/Katartillustrations

Q1. 自己紹介をお願いします。またあなたのアーティストとしてのバックグラウンドについてもお教えください。

A1. こんにちは!カット・ヤングといいます。オンラインではKatArt Illustrationsと名乗っています。オーストラリアのインディ系イラストレーターで、コピックマーカーをメイン画材として使っています。ちょっとノスタルジックな感じもありつつ、エレクトロポップを思わせるような、風変わりで幻想的なイラストを描いています。

色と光がすごく重要だと思っていて、画材のいろんな使い方を試すのが大好きなんです。物心ついたときから絵を描くことに熱中していて、学校ではずっと絵を描いていました(描いちゃいけないときでもね)。それから美術の学士号とイラストの学位を取得し、16歳のときからこの業界で働いています。なので、もう人生の半分以上になりますね。

Q2. コピックとの出会いについて教えてください。コピックに興味を持ったきっかけは何でしたか?

A2. 学校の美術室にコピックが置いてあったんですよ!それまでグラファイトやアクリルを使っていたのですが、すぐにコピックに惹きつけられました。アクリルより多目的に使えるし(学校のノートにも描けちゃう)、色も豊富です。当時、私はグラファイトで描いたモノクロ作品から脱却しようと色彩理論を独学で学ぼうとしていたところだったので、完璧なタイミングだったんです。

Q3. コピックで特に気に入っている特徴や機能は何ですか?また、その理由も教えてください。

A3. すごく使い勝手がいいんですよね。いろんな表現や質感を作る方法がいっぱいあって、実験のしがいがあります。インク補充ができるので、夜中にインクが切れても描き続けられますから、翌朝画材店に行って新しいマーカーを買う必要もありません。自分でカスタマイズできるのも気に入っていて、何本もオプショナルニブに交換しています。

カラーバリエーションが豊富で、空ボトルを使って自分だけの色を作れるし、使う紙によって塗り方を変えることで、まったく違う仕上がりにできるのもいいですよね。しかも、ほとんど散らかさないで済むから、片付けるのも簡単です(子どもができてから、この点がすごく重要になりました(笑))。

Q4. コピックに対する技術的な探求には、いつも感心させられます。メーカーである私たちでさえ想像もつかないようなユニークな方法を開発し、コピックの表現の幅を広げているあなたは、まさにイノベーター(革新者)です。コピックを使うときのお気に入りのテクニックやアプローチはありますか?

A4. 本当にありがとうございます、そう言ってもらえてうれしいです!

えーと、常にお気に入りなのは、次にやってみたい「what if(もしも)」の実験があることですね。今回のコピックアワード用に二つのアイデアがあるんですけど、うまくいくかどうかすごく楽しみにしてます。

でも一番重宝しているテクニックは、通常水彩で使う「ウェット・オン・ウェット」の再現ですね。広い範囲で均一なグラデーションを作ることができるし、使い方によってはとてもクールなテクスチャーを作ることもできます。広い背景や、(作品の主題からディテールに目移りさせることなく)注目させたい部分を表現するのに最適だと思います。

Q5. 2019年からコピックアワードに作品を応募してくださっていますが、2022年には3Dメガネをかけると異なるイメージが重層的に浮かび上がる作品「From Within (anaglyph art)」がそのアナグリフ・アート・スタイルで準グランプリに選ばれました。昨年は「Sanctuary」が最終選考に残りました。多くのコピックファンが毎年新作を楽しみにしていると思います。今までコピックアワードに応募した作品の中で一番好きな作品と、その理由を教えてください。

A5. 2021年には「Connection」がエリア賞(APAC)に選ばれました。賞をいただいたのはこれが初めてだったのでとても感動しました。コピックファンの皆さんが、うんざりするのではなく、毎年私の作品を見るのを楽しみにしてくれていることを願っています(笑)。

お気に入りを選ぶのはとても難しいんですが、上記3作品に絞られるのは間違いないですね。

「Connection」での光の表現には誇りを感じています。自分がどこまで表現を追求できるか本気で挑戦した初めての作品でしたし、私にはコロナ禍でのロックダウン中の経験と結びついた意味深い作品です。

https://copicaward.com/ja/archive2021/work/detail/10584

 

「From Within」は、コピックの技術という観点ではおそらく私が達成したベストの作品だと思います。マーカーを使ってアナグリフの作品を作ろうと思ったものの、うまくいくかどうかまったくわかりませんでした。また目に見えない病気で苦しんでいる人たちを代弁する作品でもあり、これが本作に情熱を注いだ理由です。

https://copicaward.com/ja/archive2022/work/detail/13416

 

しかし(色のチョイス、ブレンドなどのテクニックに技術的な派手さはないけれど)「Sanctuary」がたぶん一番のお気に入りになりますね。制作したのは新居に引っ越す直前で、自分のはじめてのアトリエにお別れする作品になりました。そこは、アーティストとしての自分をやっと見つけることができた空間で、結婚して式のためのベールと靴を作ったのも、私のソウルアニマルだった愛犬(私の作業中、何時間でも膝の上にのっていた)を亡くしたのもそのアトリエでした。それから2人の赤ちゃんを授かり、そのことが人としての私を根本的に変えました。アトリエでは、彼らもまた私と一緒にクリエイティブな時間を過ごしてくれました。それと「Connection」と「From Within」が作られた場所でもあります。「Sanctuary」は野心的な作品ではないかもしれないけど、私にとっては大きな意味を持っているので、額に入れて新しいスタジオに飾ろうと思ってます。

https://copicaward.com/ja/archive2023/work/detail/20253

 

Q6. コピックアワードに応募する際に重視していることは何ですか?あなたが応募作品を制作する際に、クリエイティブなインスピレーションを得るために行っていることを教えてください。

A6. 私はまず自分に『もしも…』と問いかけて、そこから物事を進めていくのが好きなんです。もしもコピックだけを使ってアナグリフ作品を作ることができたら?

それは審美的にどう見えるのか?そしてどんな深い意味を持つのか?

作品の題材はほとんどいつも、その時点での私の生活で最も重要だと感じるものを選んでいます(コピックアワード前の気持ちをなんでも書いた日記みたいな感じです!)。

Q7. コピックアワードへの応募を通じて、ご自分の作品が審査・評価されることの意義についてどう思いますか?

A7. 以前は他のアーティストの素晴らしい作品を拝見すると、少し気後れしてしまうところがありました。またもし最終審査に残ったら、各分野で実績のある知識豊富な審査員の皆さんが、作品を一筆ごとに丹念に見てくれるわけですから。

でもここ数年は、他のアーティストの作品を見るのを楽しむことに専念しています。いまはプレッシャーもなく、ただ自分がどこまでいけるのかを楽しむためにエントリーしているので、とても心地よいですね。

Q8. コピックアワードで準グランプリを受賞し、最終選考に残った経験は、あなたの人生やキャリアに何らかの影響や変化をもたらしましたか?

A8. コピックアワードは、おそらく何よりも自分の仕事やキャリアに対する考え方に影響を与え、変えてくれたと思います。コピック(トゥーマーカープロダクツ)のような企業、審査員の皆さんのような一流のプロ、そしてもちろんアワードをフォローしている皆さんの反応を見て、私の作品に価値を見出してくれる人がいることを知るのは、私が間違っていないこと、そして人々に語りかけるような作品を創作していること(これこそ私がやりたかったことです)を具体的に証明してくれるようなものです。私は一度だけでなく何度も入選しているわけで、あれはまぐれだったと自分に言い訳することはできません。努力はし続けますけどね。

誰に何と言われようと創作を続けていくことに変わりないので、外的な評価が内的なモチベーションに大きな影響を与えるというわけではないんですが、アワードでの評価が作品に対する自信を与えてくれたし、自分の直感を信じられるようになりました。

Q9.コピックアワード2024の応募者が、他の応募作品や参加者と差別化するためのヒントがあれば教えてください。

A9. ほかの誰も持っていないアイデアに集中するといいと思います。世の中には理解不能なぐらい見事にコピックを使いこなすアーティストや、素晴らしいマンガ家、完璧なスーパーリアリズムのアーティストなど、いっぱい存在しています。審査員の皆さんは、そのすべてを目にしてきたわけです。毎年の受賞者と審査員のコメントを読めば、コピックの使い方が上手というだけで受賞した人はいないとわかるでしょうし、単に「いいね、キレイだね」というだけの審査員コメントもありません。作品に深遠な意味を持たせる・ユニークな思考を具現化する・あるいは熟練した技術によって、審査員に作品を見直させて、再考させて、何度でもあなたの作品に戻ってこさせることができるでしょう。

Q10. 最後に、コピックで制作された作品は、他の画材やデジタルツールで作られた作品と比べて独特の魅力があるというコメントについてどう感じますか?あなたも同じように感じますか?

A10. 私も同感です。コピックの鮮やかな色彩とスムーズな混色は、まるでデジタルで描かれたようにも見えますが、やっぱり有形で、実体的な質感はあるんですよね。大胆でシャープな表現もできるし、浮遊感のある繊細な表現、一風変わった表現もできます。コピックは多用途・多機能ですが、いまだに試してみたい新しいアイデアを思いつけるのがすごいと思います。もう何年もコピックで試行錯誤してきましたが、まだまだ多くの可能性を秘めた画材なんです。

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