コピックアワード2023
結果発表
第6回目となったコピックアワード2023には、82ヵ国から3,900点以上もの素晴らしい作品が寄せられました。
たくさんのご応募をありがとうございました。
受賞作品
グランプリ
準グランプリ
緻密に描かれた作品が多かった中で、全体の構成と色のバランスの良さで一歩抜きん出ていました。イエローからブルーのグラデーションの美しさ、その中で様々な人物たちが細かく描かれているので作品を観るための距離感を楽しめました。
(押元さん)
見れば見るほど楽しい一枚。光の表現がとても綺麗で、かつこの情報量、楽しんで描かれたことが想像できました。
(星野さん)
準グランプリ
オンライン審査では花鳥画のような伝統的な構図ということもあり、一見してありがちと思ってしまいました。しかしながら、原画を間近で見てみると、その塗りの美しさ、描線の確さを感じることができました。技術の高さに改めて脱帽しました。
(竹内さん)
線がとても美しく、原画を拝見した時に息を飲みました。温もりがあり繊細な表現で、見事の一言です。
(星野さん)
次世代アーティスト賞グランプリ
ドリーミーだけど、どこかシュールさもあり、審査員チームでどのように構成していったのか想像しながら鑑賞し、多くの作品群の中でも目立っていました。背景そして建築物の黒の使い方も秀逸。筆運びも軽やかで、迷いがなく見ていて清々しい作品です。
(篠原さん)
地上から遥かに聳える重層的な建物。ついついどうやったら頂上まで辿り着けるのか、目で追いかけてしまいました。途中途中にウサギのようなキャラクターや怪獣のような生き物がいて、さまざまなことが起きている。ぽこさんが描いた『ウォーリーをさがせ!』のような絵本を見てみたいです。
(竹内さん)
星野桂 審査員賞
夜空と猫ちゃんの瞳が見れば見るほど吸い込まれそうで飽きません。毛の流れも見事に描かれていて、でも温もりと揺らぎがある。ハートを撃ち抜かれました。
篠原ともえ 審査員賞
抽象的な作品が多いアルコールインクアートですが、金魚が水の中で漂う美しさが見事に表現され、具体的なモチーフの表現に挑戦したことも高く評価したい作品です。繊細に色を表現してるところにも感動しましたし、ドレスにしたいと思うくらい素晴らしい作品でした。
竹内康彦 審査員賞
多くの人が子どもの時に空想したであろう、ガラス玉の中に収まった海の世界を描いていて、webで見た時から好印象を持ちました。1枚の絵からさまざまな物語を想起させてくれる力を持った作品だと思います。
押元一敏 審査員賞
自身が負った傷をコンプレックスとして生きてきた想いを絵で表現したことは、勇気があると同時に自己表現の強みでもあります。それが画面構成にも表れていて力強い作品だと思います。観ていて心地よいという作品とは別に、作者にとって描かなければならない意義を感じました。
pixiv賞
まず、キャラクターがとても可愛らしいというところと、UVライトを当てるとイラストが光って浮かび上がるという仕掛けに魅力を感じ、選出させていただきました。pixivはweb上のサービスなので普段デジタル作品を多く拝見していますが、この作品にはアナログの画材にしかできない魅力が詰まっていると思います。
SNS賞
リボン、フリル、レースなど、女の子らしい定番アイテムの描写技術は言うまでもありませんが、この作品の最大の魅力は描かれた少女の表情、特に美しい瞳にあります。彼女の瞳がもつ甘美でありながらミステリアスな雰囲気は、彼女の物語を解釈し想像することを見る者に委ね、SNS上で多くの人々を魅了しました。
立体作品賞
青空の下、爽やかな風が吹いているかのように気持ちよさそうに寝転がるうさぎさんたちがとても可愛らしいです。カラフルで繊細なカラーリングが施された小さくて細かなたくさんのパーツが、技術力と集中力の高さを感じられます。
立体作品賞
珊瑚を雄鹿の角に見立てるという発想がまずとても面白い発想だなと思いました。
海上から照らされる陽光によって、とてもカラフルな見え方になるのは容易に想像でき、見ていて自分も海中の中にいるように感じさせる作品です。
また、赤色と青色の部分それぞれで様々な見え方が出来るのがとても印象的でした。
APACエリア賞
とても美しい作品です!
EMEエリア賞
濃淡の表現および混色技法、そして驚くべき3D効果の完璧な組み合わせが見事です。
NAエリア賞
この幽玄なキャラクターは2Dで描かれていますが、鏡の上に配置したことでイメージにさらなる深みを加えています。流れるようなフォルムの衣服、頭上で砕け散っている物体、そして脳裏に焼き付いて離れない、全体的なイメージ…。すべてのピースが組み合わさることで、この作品が伝える物語に引き込まれていきます。
LATAMエリア賞
色の使い方がおもしろいですね。メッセージもいろいろな解釈ができて興味深いです。
Africaエリア賞
オリジナリティのある作品でとても気に入りました。細部までこだわって描かれており、全体を通じて非常にユニークなテーマがあります。色使いもすてきです。
インクアート賞
すべての応募作品に目を通しましたが、その際は作品の創造性、技術、独創性に注目しました。
アトリエ洒楽さんの作品「Noble Woman」は、揺れ動くドレスを着た女性を美しく描いており、私の目を惹きました。作品には動きとセンスが感じられ、コラージュとコピックインクを組み合わせて見事に構成された、非常に独創的で遊び心のある作品です。
あなたにアルコールインクアート賞を授与できることを光栄に思います。おめでとうございます!(アン・ルース・スミンクさん)
Vexx賞
受賞者の皆さん、おめでとうございます!アートは主観的なものなので、選考は簡単ではありませんでしたが、受賞作品はどれも優れたクリエイティビティを発揮しており、最高の色彩があり、すばらしい実行力で作り上げられた作品に映りました。賞品を楽しんでください、そしてこれからも描き続けてくださいね!
Vexx賞
Vexx賞
お気に入り賞
インスタグラム@copic_awardに投稿するために日々大量の作品画像を見ていますが、この作品の圧倒的な画力に目が奪われたことをいまでも鮮明に覚えています。本作のキャラクターが人知を超えた存在であることを示す鱗の描写、そして海面と泡の細やかな表現に加えて、表情が丁寧に描かれており、いまにも動き出しそうです。
コピックチーム賞
作品コメントにあるように、確かな画力による陰影を効果的に使った絵画のような重厚感と、人物の表情の豊かさに物語性を感じ、惹かれてやまない作品です。強さの違う日差しが当たる木々の生命力や、反射する水面にほんのりと映るブルーやピンクなど、印象的な画面を作り込む上手さに唸ります。手前の日帰り探検隊の少女たちは比較的あっさりとした画風で描かれている印象ですが、それが背景と相まってとても魅力的な作品に仕上がっていて、じっくりと原画を拝見したい作品です。
コピックチーム賞
鮮やかで繊細なグラデーションがあまりにも綺麗で思わず釘付けになりました。人物の髪や服で色が溶け合っていて、多くの色を使っていながら色彩にまとまりが生まれています。細部まで細やかで隅々まで見ていて飽きない作品です。きっと原画はより迫力があるのかなと思います。いつか原画を拝見してみたいです。
コピックチーム賞
幅広い色を使いながらもトーンがまとまっており、コメントにある通りDanielさんがコピックの特徴を色々実験されたことが伝わってきます。
筆先のタッチをポイントに、緻密に描かれていて隅々まで見たくなる作品です。
コピックチーム賞
原画が到着した時から存在感があり、まるで絵本の1ページのような優しく可愛らしい作品に心惹かれました。立体部分に使用している紙の質感の違いや影が、アナログ作品ならではの温かみを増しているように感じます。優しい表情の花に囲まれて、ゆっくり自分と向き合いたくなる作品です。
マルチライナー賞
マルチライナーを使って描かれた秀逸な作品が多い中、特に書き込みの量が多く、目を引く作品でした。絵の中にほどよく散りばめられた色がモノクロの絵の壮大さを引き立てていてるとともに、良いまとめ役にもなっています。また、「悩み」というタイトルとは裏腹に描かれているモチーフはどこか可愛らしさもあり何か物語のようなものを連想させられました。ぜひ他の作品も拝見してみたいです。
入選作品
審査員
星野 桂
漫画家
篠原 ともえ
デザイナー/アーティスト
竹内 康彦
「イラストレーション」編集長
押元 一敏
東京藝術大学デザイン科准教授/画家
コピックアワード審査会
レポート
2023年9月某日、コピックアワード2023の最終審査会を行いました。
世界中から応募された3,900点を越える作品の中から見事選ばれた50作品を取り寄せ、原画での最終審査となります。
おかげさまで国内のアナログ作品の公募展の中でも応募作品数においてトップクラスとなるコピックアワードですが、審査員の方々も「一次審査のWEB審査の時点でとても選ぶのが難かった」と苦しそうにおっしゃりながら、審査会当日に対面した作品の熱量に目を輝かせていました。
作品と同じ目線の高さで、さまざまな角度から全ての作品と対面している審査員の方々の姿が印象的で、作品のテクニックを目で追いながら、紙の上に込められた想いまで理解して受け止めようとしているようでした。時には感嘆の声も会場に響きました。
WEB上では伝わりづらい繊細な工夫やこだわりを感じることのできる原画のエネルギーはやはり凄まじく、スタッフも食い入るように作品の鑑賞を楽しませていただきました。
前回も審査員を務めていただいた押本さんは、「今年は完成度の高い作品が多かったです」と応募作品全体におけるクオリティの高さに注目していました。
また篠原さんと星野さんはコピックの補充用のインクを使用したインクアートの原画を初めてご覧になり、従来の使い方とは違った新しいコピックの技法に作品を通じて刺激を受けていたようです。
今回グランプリに輝いた作品はなんとコピックマルチライナーをメインで使用したモノクロ作品、しぃおんさんの「繊細」です。
さまざまな線幅のマルチライナーを使い分けた線や点描などのテクニックはさることながら、絵の中では一見白に見える肌の部分にも繊細な線が引かれていることが原画を見ることによって分かり、そのディティールの細やかさに驚かされました。また、紙の上では1色の作品ですが、作者のさまざまな感情が豊かに描かれ、色があるような錯覚すら覚えます。
これまでマルチライナーの作品がグランプリを受賞したことはなく、コピックアワードの多様性と可能性を改めて感じ取ることができる素晴らしい作品でした。
今年は細かな描き込みの作品が多く見受けられました。
次世代賞グランプリのpokoさんは、下描きなしでこのクオリティの作品を生み出しているそうです。
コピックアワードはどの作品が注目されるかは毎回予想ができないほど、感情を揺さぶるさまざまな作品が多く集まります。
「コピックアワードへの参加で重要なことは受賞することではなく、限られた日数でコピックという画材と向き合い、自分の表現をぶつけ、その絵を書き上げる、というところにある」と星野さんはおっしゃっています。
今回の応募作品が惜しくも入選・受賞作品に選ばれなかった方も、自分が素晴らしいと思える作品作りをこれからも続けていただけることを願っています。あなたの作品はきっと世界の誰かの心に残っています。
そして、第7回目となる「コピックアワード2024」の開催も決定しました!詳細は順次WEBサイトやSNSでお知らせいたします。
ぜひご自身が描きたいもの、描いていて楽しいもの、極めたいもの、伝えたいことなどそれぞれ自由にテーマを設定して制作された作品をご応募ください。また次回のアワードで新しい作品に出会えるのを心より楽しみにしています。
線の表情が豊かで、特に薄く描かれた肌の表現は群を抜いています。画面いっぱいに作者の想いが詰め込まれ、ある意味自画像のような人格までもが滲み出る作品だといえます。その精神性とペンがうまく噛み合っている点に惹かれました。
(押元さん)
曲線・直線・点線を組み合わせた自由なペンの動きは、心でなぞりたくなるほど、情緒的で物語を想像させます。立体感があるモノクロームの世界を、じっくり見入ってしまいました。
(篠原さん)