コピックアワード2020
結果発表
第3回目となったコピックアワード2020には、昨年の応募数を大きく上回る4321点もの作品が寄せられました。
たくさんのご応募をありがとうございました。
受賞作品
グランプリ
準グランプリ
どうして一次選考の時に見落としてしまったのだろうというぐらい、原画で実際に見たらすごく熱意の伝わる作品でした。かわいい女の子のキャラクターをメインで描く作品は多くありますが、これはもう全部全力で描いてるなと。木の肌の質感や植物の捉え方の描き込みなど、誠意をもって描いているという迫力を感じました。
(せきや)
アワードのサイトで見た時から目立っていて、自分で選んだ作品のひとつです。一番最初に画面で見た時からすばらしくて、少し感じた怖ささえその良さなのかなと感じました。原画を見た時、あぁこれは絶対優勝だと思いました。この描き込まれた世界観にキャラクターがミックスされた様子がすごく素敵です。
(津森)
準グランプリ
これは絵の構図や描き込まれているモチーフがシュルレアリスムのようなSF映画のような、いろんなイマジネーションをかき立てるような不思議な絵ですよね。塗りもシンプルなのかと思えば、背景のタイルは一つずつ均一に塗るのではなくちょっとずつ陰影をつけていたりと、実物を見ると凄く丁寧な仕事をされているのがわかりますし、アイデアと技術が両立しているすごくいい作品だと思います。
プロフィールをほとんど見ずに審査したのですが、アルゼンチンの若い20歳くらいの人ということでちょっと会ってみたいと思わせられます。今後の活躍に期待していますし、面白い良い作家が見つかったなと思いました。
(岩渕)
次世代アーティスト賞グランプリ
虎のなんともいえない表情に対して、草食動物たちの表情が読み取れないところなど、このイラストにどのようなストーリーが込められているのか、ひと目で興味をひかれて想像を掻き立てられました。
やや俯瞰ぎみに描いている構図も印象に残ります。
また、塗りも細部まで丁寧で、陶器質の光沢と面、温もりと冷たさまで感じるタイルの表現なども秀逸です。オレンジ、ミントブルー、ブラウンのまとまりのある色調が素晴らしいです。
岩渕貞哉 審査員賞
これは、単純に派手なものやキャッチーなものを描くのではなく、空間の描き方とか、シンプルな色使いや人物の造形に落ち着いているけれどセンスの良さを感じられて好感を持ちました。今の若者の感覚というか、地に足が着いていながらも軽妙さのある印象を受けます。
原画で実物を見て、よりいいなと思ったポイントとして、色味の使い方も良かったです。落ち着いたトーンの中にポイント的に明るい色を使っていたり、ちょっと青を利かせてみたり、という配色も綺麗でいいなと思いました。
(岩渕貞哉)
小畑健 審査員賞
最初に一次選考でアワードサイトで見たときからすごくいいなって思っていて、実物が見たいという思いがあって選びました。
自分もこういう絵を描きたいと思って試したこともあるんですけど、なかなか満足したものは描けないです。こういう絵を描く人がすごく昔から好きなので、単純にこの絵は好みで選ばせていただきました。
(小畑健)
せきやゆりえ 審査員賞
コピックの技術というか、使い方的にはすごくストレートな塗り方だと思います。
色の塗りはとてもシンプルなんですけど、あんまり見たことない作風だな、と思って目を引かれました。全体的に紫色のトーンで作られていて、暗い室内に光が反射してる感じだとかがとても上手に描けていますし、絵の空気感がすごく素敵です。色のバランスとかもセンスがあって、とても好きな作品です。
(せきやゆりえ)
津森千里 審査員賞
まずは、動物がいっぱい出てきてその動物たちと人間が一緒にご飯を食べてる絵、っていうのがすごく楽しいなと思いました。とてもカラフルだし楽しそうだし、夢があっていいですよね。たまたま自分が今回アフリカをテーマをした洋服を作っていて動物に関心があるというのも選んだひとつのきっかけになるのかもしれませんが、私は審査員賞に関しては純粋に好きなものを選びました。ファンタジーのようにどこかおかしくて、面白がれるイラストが好きなのですが、この絵の作者もそうやって楽しみながら描いたんじゃないかなと伝わってくるのがとても良かったです。
(津森千里)
松下計 審査員賞
新型コロナウイルスのことをテーマにしている作品で、今年の時代を振り返ったときに「そういえばあの年はコロナが大変な年だったよね」っていうことを思い出せるような絵だったので、今年の象徴として良いなと思ったのが一つの理由です。また、言語的なアプローチをしている作品が多い中で、これは比較的 詩を感じたというのがもう一つの理由です。この感情が溢れるようなアプローチに対して惹かれるものがあり、選ばせていただきました。
(松下計)
pixiv賞
入選作品にはいずれも甲乙つけがたい作品が数多くあり悩みましたが、この作品は原画を見たときに緻密さが頭一つ抜けており、コピックをしっかり使いこなしているなと、技術的な面が特に素晴らしいと感じました。淡い色が主体なのにも関わらず線がしっかりしていて、印象的に仕上がっています。
クラフト賞
生命と融合している不思議なレトロ調の宇宙服や物哀しげな顔の表情のためか、映画のストーリーを彷彿とさせ、神秘的な時空を超えてここに現れたかのように感じます。
豚革を素地に用いられ、コピックによる緻密な線や彩色の組み合わせによって表現された人形には、作者ならではの世界感がよく表現されており心惹かれます。イマジネーション豊かな作者のこれからに大いに期待しています。
SNS賞
Instagramで非常に多くの注目を集め、今年はじめて設けられたSNS賞の受賞作品に決定しました。おおらかで力強い雰囲気と、コピックらしい鮮やかな画面が印象的で、数多くの人から高評価を得たのも納得のイラストでした。
入選作品
審査員
岩渕 貞哉
「美術手帖」総編集長
小畑 健
漫画家
せきや ゆりえ
イラストレーター
津森 千里
デザイナー
松下 計
アートディレクター/東京藝術大学 デザイン科教授
コピックアワード審査会
レポート
第3回目となったコピックアワード2020には、昨年を大きく上回る4321点もの応募が寄せられました。応募作品の数だけでなく参加国も89カ国に増えており、今年も世界中のコピックユーザーの方々に参加をいただけました。
4300点を超える個性あふれる力作から10点を選考するのは非常に難航したとのことですが、審査員の5名には全作品のなかからそれぞれ入選作品を選んでいただきました。最終審査では、それら入選作品の原画を実際に並べて審査を行いました。
入選作品の原画が並んだ風景は圧巻で、審査をする傍ら審査員、スタッフ共に食い入るように作品の鑑賞も楽しませていただきました。
審査員独自の視点で作品を選んでいただくため評価の基準は様々ですが、今年の入選作品のなかでは特に「絵を描くのが好きだという気持ちが伝わってくるような作品」、そして「丁寧な積み重ねが想像できる作品」が注目を集めました。
どうやって描いたのだろうと工程に興味が湧くような緻密で工夫がこらされた絵が多く、グランプリを受賞した「silk hat cat」や「Vielfalt」、「Humedo」、「The Baker」など、完成に至ったまでに想像できる手数の多さや丁寧な塗りに圧倒されました。
受賞作品の数は限られていますが、審査員の小畑健さんからは「気になった作品を原画で実際に見られたのも楽しかったですし、(一次選考で)サイトで作品を見るだけでもすごく楽しかったです。
自分で絵を描いていてしんどい時もあるんですが、人の描いた絵を見るのは面白いですし、また描こうという気持ちにさせてくれます。」
といったコメントもいただきました。
コピックアワードをきっかけに受賞作品から刺激を受けることもあると思いますし、応募作品の一つひとつを見ていくうちに偶然好みの作品をみつけたり、自分の作品を見てもらう場所として活用していただけたら嬉しく思います。
コピックアワードの次回開催も決定いたしました!詳細は順次ウェブサイトやSNSでお知らせいたします。ぜひご自身が描きたいもの、描いていて楽しいもの、極めたいもの、伝えたいことなどそれぞれ自由にテーマを設定して制作された作品を、また次回のアワードで観せていただけることを非常に楽しみにしています。
隙間を空けながらいろんな色を混ぜつつ画面の中で色が濁らないような配慮、離れて俯瞰してみると複雑な表現がされていて近寄ってみると一つ一つの色が際立っていて……という工夫を感じられ、実はすごく計画的に描かれた絵なんじゃないかと思います。
最後に悩んだ3作品はどれがグランプリになっても全くおかしくなかったですが、評価をするとしたらその技術力の高さかなと思ってこの1点を選びました。
(松下)
一次選考のときから気にはなっていたのですが、原画でみたら面白くてなんだか不思議で妙に引き込まれました。作者が描いてて楽しそうだなっていうのが伝わってくるのがいいです。
(小畑)