【インタビュー】2020年度審査員 小畑健さん
第2回目は『ヒカルの碁』『DEATH NOTE』『バクマン。』など多くの人が一度は手にとったことがある作品を次々発表されている小畑健審査員のインタビューです。
ファンの年齢層も厚く、コピック好きの方ならその超絶技巧に憧れている方も多いのではないでしょうか。
そんな小畑先生の作品選考理由やコピックの利点、次回開催へ向けてみなさんへのメッセージをお送りします。ぜひ最後までご覧ください。
小畑健 審査員 インタビュー
小畑健 漫画家 1989年に『CYBORGじいちゃんG』で「週刊少年ジャンプ」に連載デビュー。以来、様々な原作者とのタッグで多数の漫画作品を手掛ける。代表作は『ヒカルの碁』『DEATH NOTE』『バクマン。』など。2021年1月に「ジャンプスクエア」にて連載していた『プラチナエンド』が完結。 |
_作品審査を終えてのご感想をお願いします。
世界中から集まった個性のある絵を見られて楽しかったです。自分自身、作品のカラー原稿をコピックで塗っているので、他の人はどういう風にコピックを使って塗っているのかについてすごく興味がありましたし、コピックアワードの応募作品のなかには紙以外に描かれた作品や一枚絵ではなく立体物の作品もあると聞いて、そういう作品の幅の広さにもとても興味を引かれていたので、一次審査から多くの作品を見ることができてとても面白かったです。
ー審査会での小畑さんは、それぞれの作品の塗り方に特に注目されていた印象があります。ウェブでのー次審査では全作品の中からどのような基準で10点を選ばれたのでしょうか。
コピックで描かれる絵って楽しさが伝わる絵が多いと思っているのでその楽しさを感じられる作品だったり、この塗りにはどんな技術が使われているんだろう、と思わず気になるような作品に注目して選びました。
ー実際に原画を見て、特に技術面で印象的だった作品はありましたか?
「vielfolt」の塗りは、もう常軌を逸していると思いました。自分も多くの色を何度も塗り重ねていく描き方をするんですけど、ここまで根気強く表現できないなってぐらい塗り込まれていると感じましたし、不思議な印象を受ける絵だと思います。直接見ると特にわかるんですが、絵の質感がすごいですよね。よくコピックでここまでできるなと本当に感心しました。
ほかにも、実際に自分が普段描かないようなテイストの絵も原画で見るとすごく面白かったです。コピックのムラを残した単純な塗りの絵でも、描いてて楽しそうだなっていうのがすごく伝わってくるものもありましたし、他の審査員の方々が選んだものの中にもたくさん良い作品がありました。
準グランプリ「vielfolt」/HiddenService
ー審査員賞に選ばれた作品「ばばば」についてコメントをお願いします。
最初にWEBで見たときに直感的に気に入って、これは実物が見てみたいなと思って選んで、審査日当日に原画を見たときにやっぱり一番好みだなと確信したので審査員賞に選ばせていただきました。昔、自分もこういう感じの絵を描こうと思って何度かトライしたことがあったんです。こんな絵を描きたいなと思って何となくペンを走らせて描き始めるんですけど、途中でなんか気に入らなくなったり、イメージ通りに描けなくて完成しないんですよね。こういう複雑な線の絵が好きで、ずっとこんな絵が描けたらいいなと思っていたそのものの絵だったので、これはもう好みで選びました。
小畑健 審査員賞「ばばば」/魚pH
ー小畑さんにとってコピックはどのような画材でしょうか?
コピックはイメージをすぐに形にしやすくて誰にでも使いやすい画材だと思います。以前、普段絵を描かない母親にちょっとコピックを使ってもらう機会があったのですが、絵心がないと言いつつそれなりの絵が描けていて驚きました。初めての人でも使えるし、慣れていけば他の画材にひけをとらない凄い絵も描けますし、とてもポテンシャルのある画材だと思います。
ー小畑さんは、アナログ画材とデジタル画材の使い分けについてどのように考えられていますか?
どちらが善い悪いとかではなく、自分がアナログを使い続けている理由は、これまでの経験から「これは多分手でやった方が早い」「手で描いた方が楽しい」 っていうのがわかるからです。逆にデジタルの方が都合がいいと思った時はデジタルツールを使います。
アナログはデジタルに比べて不便という意見は自身も感じることはありますが、その不便さを逆手に取ると、意外と広がっていくところもあると思っています。制約のあるものを工夫して使うことが元々好きなので、制約と自由度の両面があるアナログ画材を使うのは面白いですよ。
ー次回の開催に向けて、全世界の応募者に一言をお願いします。
応募作品は全部アワードサイトに載りますよね。自分はサイトで作品を全部見てるときが本当に楽しくて、自分も絵を描きたい、という気持ちになりました。絵を描いているとしんどい時もあるんですけど、誰かが描いた絵を見るとやっぱり楽しくなるんですよ。コピックアワードに関しては「選考にもれる」というのは特に損なことではないと思っています。受賞できなくても、サイトに上がっている絵を見て楽しんでいる人がいますから。コピックは優れてる画材だと思いますし、先ほども言いましたが初めての人でもすぐ始められてすぐ形になる画材なので、誰でも気軽に応募してくれたらいいなと思いますね。
小畑先生、貴重なお話をお聞かせいただきありがとうございました。