• TOP
  • 特集
  • 【インタビュー】2020年度審査員 岩渕貞哉さん

【インタビュー】2020年度審査員 岩渕貞哉さん

 2021.03.15

コピックアワード2020で審査員を務めていただいた岩渕貞哉さん、小畑健さん、せきや ゆりえさん、津森千里さん、松下計さんにインタビューにお答えいただきました。審査会を終えての感想や、WEB審査と実際に原画を見られて感じた違い、コピックとデジタルの併用や次回アワードへの応募を迷っている方への激励などをお送りいたします。

第1回目は「美術手帖」総編集長をつとめる岩渕貞哉審査員のインタビューです。
コピックの可能性をさらに広げるような作品を率先して選定してくださり、コピックアワードの多様性に繋げていただきました。

岩渕貞哉 審査員 インタビュー 

岩渕貞哉 「美術手帖」総編集長 (Twitter)

1999年慶応義塾大学経済学部卒業。2002年より『美術手帖』編集部に携わり、2008年より編集長を務める。美術出版社取締役。
2019年、アートECサイト「OIL by 美術手帖」をローンチ。
公募展の審査員やトークイベントの出演など、幅広い場面で現代のアートシーンに関わる。

ー作品審査を終えての感想をお聞かせください。

1次審査で約4300点の中から10点を選びましたが、他の審査員の方が選んでいる作品の傾向も違ってバラバラで被らなかったので、他の方が選んだ作品や自分が選んだ作品の実物が見られるのがすごく楽しかったです。

ー受賞作品を振り返ってみていかがでしたか?

グランプリと準グランプリの三つは全部傾向が違って、全く違うものを選べたので、今後コピックを使ってみようという人にも「いろんな使い方ができるんだな」とか「同じ画材でもこれだけ幅広い表現ができる」というのがすごく伝わるような3点を選ぶことができたと思います。

ー今回は個性が際立った作品が選ばれたということでしょうか。

そうですね。どの画材を使ったとしても出てくる個性とか表現したいものが素直に表現されているものが、”いい絵”として見ることができると考えています。
油絵の具などは扱いが難しいので習熟するまでに何年もかかったりとか、色々用意するのも大変だと思うんですけど、コピックは手軽に始められるけれど、遠くまで、深くまで表現を考えることができる面白い画材だと思います。

岩渕さんは他にも多くのコンペに審査員で参加される機会が多いかと思いますが、他のコンペとコピックアワードでの違いはありましたか?

普段は美術系の審査に携わることが多いのですが、"一つの画材をメインに"というコンペの審査があまりないので、約4300点の作品を見ていて、こんなにいろんなバリエーションがあることが驚きでした。
また、世界中のいろんな国の作品を見れるというチャンスは今回が初めてだったので、また違う楽しさと醍醐味がありました。

ー一次審査では全作品の中からどのような基準で10作品を選びましたか?

応募作品の全体の傾向としては、緻密に描きこんでいったり描写が細かいものが多かったですが、僕は普段はもうちょっとペインティングやコンセプトが立っているものを見ているので、絵にアイデアがあったり、単純に足していくよりも引き算をしたり、構図が面白くモチーフが立っているものが気になりました。
緻密に描くというよりも、構図やコンセプトみたいなもので気になった作品を選んでみました。コピックでもこういう表現ができるんだとか、いわゆるペインティングと絵画的な思考をしているものを選んでいたかな、と他の方が選んだものとを見比べてみて思いました。

ー審査員賞に選んだ作品についてコメントをお願いします。 

今の若者の感覚というか、地に足が着いていながらも洒脱で軽妙な印象を受けました。
単純に派手なものやキャッチーなものというよりも、落ち着いているけれどセンスのいい空間とか、色使いや人物の造形というものが感じられて好感が持てました。
落ち着いたトーンの中にポイントに明るい色を使っていたり、ちょっと青を利かせてみたりといった色使いも良かったです。審査会で実物を見て、やっぱり色の使い方が綺麗だなと思いました。

 

あともう一つ、準グランプリになった(作品「Humedo」/Salvador Piuma)アルゼンチンのアーティスト・Salvador Piumaさんの作品が印象的でしたね。水が浸かった空間に桜と蛇が貫入していて、そこに土管のようなものがあって。シュルレアリスムとか、SF映画とか、ちょっと不思議ないろんなイマジネーションをかき立てますよね。
すごく細かいタイルも一つずつ均一に塗るのではなく陰影をつけたりと濃淡を出していたりしていて、実物を見るとものすごい丁寧な仕事をされていて、アイデアと技術が両立しているすごくいい作品だと思いました。

今日はプロフィールを見ずに審査したのですが、後からアルゼンチンの若い20歳くらいの人ということを聞いてとても興味を惹かれました。日本も含めてアジアの文化に関心がある方だと思うので、ぜひ日本でも作品を見せる機会があったら面白いんじゃないかな。今後の活躍に期待しています。面白い、いい作家が見つかったなと思いました。

岩渕貞哉 審査員賞「今日の記憶」/susu kim

準グランプリ「Humedo」/Salvador Piuma

 

ー次回の開催に向けて全世界の応募者に一言お願いします。

審査は審査員の人の基準で選んでいるものです。本来絵画は正解がないというか、順位を基本的にはつけるものではないと思うのでそれぞれの個性を出していけばいいです。
多分、他の審査員の人たちが選んだらまた違う結果になったと思うので受賞した人も、受賞しなかった人も、これはあくまで一つのきっかけだと思います。
グランプリを取った人よりも、違う賞の人がその後伸びたり、ということもコンテストではよくあったりするので、この結果を良い方にすることもそうじゃなくすることもその人次第だと思っています。ぜひ、自分の道を信じて選んでもらえたら嬉しいです。

岩渕さん、貴重なお話をありがとうございました。

特集一覧へ

お問い合わせ

お問い合わせ頂く前に、よくある質問をご確認ください。
よくある質問を確認いただいても問題が解決しない場合は、お手数ですがお問い合わせフォームよりご連絡ください。