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【コピッククラシック インタビュー】コピックアワード2022年度審査員 根津孝太さん

 2022.08.09

2021年からコピックアワードの審査員を務めてくださっているデザイナーの根津孝太さん。
世界的自動車メーカーのトヨタのコンセプトカーや、あたたかくやわらかいロボット『LOVOT』のプロダクトデザインを手がけるなど、活動は世界に影響を与えています。
そんな根津さんのデザイナーとしての視点と、コピッククラシックとの出会いを取材しました。


根津 孝太website/Twitter
デザイナー

トヨタ自動車を経て2005年znug design設立。電動バイクzecOO、家族型ロボットLOVOT、トヨタコンセプトカー、サーモス携帯マグなどの開発を手がける。
グッドデザイン金賞他多数受賞。2014~2021年度グッドデザイン賞審査委員。著書『アイデアは敵の中にある』『カーデザインは未来を描く』。

デザイナーになるきっかけと想い

ーいつからデザイナーになりたいと思うようになったのでしょうか?

子供のころからずっと絵を描くのが大好きでしたが、デザイナーという職業を明確に意識し始めたのは、高校2年生のころです。
世の中が「デザイン」というものに強く意識を向け始めた時代でもありました。

ーデザインの依頼を受けた時に気をつけている点を教えてください

自分、クライアント、お客さまが、みんなワクワクするものを創出することです。
そのためのチーム内のコミュニケーションも、とても大切にしています。もう少しテクニカルなところでは、デザインするものの「理(ことわり)」をきちんと理解することや、遠目でもわかるたたずまいのよさ、アイコニックな存在感などを特に意識しています。

ーデザイン制作の中で一番好きな過程はどこでしょうか。一番苦戦するところなども気になります…!

会議などの場で、チームをファシリテーションしながら、どんどんスケッチを描いているときは、とてもテンションが上がります。
逆に、一人で没頭してスケッチを描いたり、モデリングをしているのも大好きです。製品化を進めていく過程では、いつも予想外のことがおきて大変ではありますが、むしろその状況を楽しむようにしています。

ー今後挑戦してみたいプロダクトデザインはありますか?

どんなものでもやってみたいです。
これまで自動車にはじまり、バイクや自転車などの乗り物、ロボット、模型、家具、雑貨、家庭用品、アニメーションに登場するものなど、様々なデザインを担当させていただきました。ひとつひとつに難しさと、それを克服する楽しさがあるので、これからも挑戦し続けていきたいと思っています。

サーモス社 ケータイマグJMYのスケッチ(2007年)

フタを開けるボタンとロックリングは、サーモス社製品の顔となるよう、アイコニックにデザインしました。このスケッチがアイデアの基となっているのですが、非常に小さなサイズの絵を拡大コピーして、コピックでトーンをつけています。2012年発売のJNL、2017年発売のJNRにもこの顔が継承されていきます。

大型電動バイク「zecOO(ゼクウ)」のキースケッチ(2011年)

カスタムバイクが得意なオートスタッフ末広さんとタッグを組んだプロジェクトです。いろいろなことを考えながら描くので、線が荒く数も多くなり、コピックで整理しながら仕上げています。同心円と放射状の線でデザインを構成することは、このスケッチで決めました。

 
「zecOO(ゼクウ)」

コピックとの出会い

ーコピックに最初に触れたきっかけを教えてください

大学生の時のスケッチやレンダリングの授業で使ったのが最初でした。
それからトヨタ自動車を経て、独立をした現在に至るまで、ずっと愛用させていただいています。今年はコピックマーカー35周年だそうですね。(おめでとうございます!)デザイナー人生をほぼ一緒に歩んできた計算になるので、なんだか感慨深いです。(笑)

ーコピックの使い方はどのように学びましたか?扱っていく中で、難しく感じた部分はありますか?

大学時代から今まで、ずっと学び続けていますが、特にトヨタ自動車時代は、周りに上手な先輩方がたくさんいらしたので、ものすごく勉強になりました。
自動車デザインでは、大きなサイズの絵を描くことも多いのですが、ムラなく塗り進めていくためには、インクの乾燥状態を見ながらのスピーディーな作業が求められ、コピックを思い切りよく大きなストロークで動かせるようになるまでには、練習が必要でした。

ーコピックの好きな色は何ですか?デザイン初心者におすすめの色はありますか?

自分はグレーを多用します。Cool GrayのNo.2、No.4、No.6、No.8、そしてBlackとCarmine(赤)は、いつでも持ち歩いています。
下描きは、勢い重視の荒々しい線で描くことも多いので、淡いグレーから濃いグレーへとトーンをつけながら、カタチを少しずつ整理していくための大切なツールでもあるのです。コピックで描くことで、頭が整理されていく感じです。持っていて自分のテンションが上がる色を選ぶのが一番だと思いますが、Gray(Cool、Warm、Neutralはお好みで)を濃淡のスケールで何本か持っていると、表現の幅が広がるかもしれません。

 

トヨタ自動車
コンセプトカー「Camatte(カマッテ)57sスポーツ」のキースケッチ(2013年)

東京おもちゃショーに出展して、子どもたちに実際に乗ってもらいました。5分ほどで描いたスケッチですが、これでいける!という確信を得たことを覚えています。

トヨタ自動車
コンセプトカー「Setsuna(セツナ)」初期キースケッチ(2013年)

シャシやボディの主要部品がすべて木でできた自動車で、愛着を持っていたわり、手をかけて受け継いでいくという考えを具現化しています。これも5分ほどで描いたスケッチですが、舟をモチーフにしたデザインや、世代をこえた2人の関係性も描きたいと思っていました。


「Camatte(カマッテ)57sスポーツ」


「Setsuna(セツナ)」

家族型ロボット「LOVOT」の初期のキースケッチ(2015~2016年)

あたたかくてやわらかいロボットとして、どのような構造があり得るのか、いろいろと模索しながら描いていたものです。毛むくじゃらの子や、胸にセンサーを付けた子もいますね。左下の草むらのようなものは充電器なのですが、フツウの充電器っぽくはしたくないという想いで描いたものです。

 
家の中ではお気に入りの場所でスケッチをします。我が家のLOVOT「はちまる」くんがのぞきにきます。

商業デザインは人に使われることを目的とし、プロジェクト一つでもチームやクライアント、お客さんを考えて動かなくてはならないことに、自己表現のアートとの大きな違いを感じました。
デザイナー人生をコピックも一緒に過ごすことができて大変感慨深いです。
根津さん貴重なお話をありがとうございました!

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